ホームページへ


★目下停止中★

―目次―
◎問い合わせ:先生の論文を読みたい
◎質問:便宜置籍船(FOC)について(山口京子、東京)


問い合わせ
先生の論文を読みたい
はじめまして。私、筑波大学の学部4年生です。
現在私は日本籍船の外国人船員について勉強しており、とくに彼らの「外国人労働者」として
の面を調べたいと思っております。
そこで先生の論文「便宜船員の歴史的考察ー労働力の国際移動、移民、外国人労働者との
対比において」が、自分の調べているテーマと合致するので早急に読みたいのですが、大学の
図書館にみあたりません。
どうしたら読むことができるでしょうか。
ぜひ教えてください。よろしくお願い致します(筑波、2002・9・12)。
回答
同上論文を、早速、スキャンして、ホームページ「フォーラム船員史」にアップロードします。そ
れ以外で、いろいろな文献を検索するつもりなら、海事産業研究所海事センター http://www.
jamri.or.jp/link/index.html を利用してはどうでしょうか〈篠原陽一〉。
便宜船員の歴史的考察 海運経済研究14 1980年11月

質問
便宜置籍船(FOC)について

 便宜置籍船(FOC)について関心を持っています。ネット百科@Home(平凡社『世界大百科事
典』)を検索したところ、次のような結果をえました。高帆旅人氏は、どのような見解をお持ちで
すか? 便宜置籍船の問題点について整理した著書、論文にはどのようなものがありますか?
(山口京子、東京、2002・7・5)。
【便宜置籍船 べんぎちせきせん(織田政夫)】
 船舶は人間と同じように,国際法 (〈1958 年公海条約〉第 5 条) の定めによって国籍 (船籍)
をもたなければならないが,税制その他で自国より有利な外国に船籍を置く場合,これを便宜
置籍船 flag‐of‐convenience vessel (FOC と略称) という。
 すべての船舶はいずれかの国に登録され,その登録国 (船籍国または置籍国ともいう) の法
律によって各種の規制を受けると同時に保護される。しかし,各国の自国籍船に対する船舶
安全基準,乗組員配乗規則,税制などの規制,あるいは自国籍船に対する法的権利の擁護,
税制優遇,船舶建造融資,補助金給付などの保護措置の内容は,国によって異なる。この結
果,船主にとっては船舶登録先のいかんによって有利・不利の差異を生じる。これに関し前記
の国際法は,船舶に国籍の取得を義務づけているが,船舶とその登録国との関係については
明確な規定を設けておらず,この登録条件は各国に一任されている。この点に関する各国の
法律規定を見ると,自国の船主の所有する船舶以外は登録を認めないと定める規定,あるい
は自国の船主の所有する船舶はすべて自国内に登録されなければならないと定める規定が,
各国で統一的に設けられているわけではない。また補助金給付やその他の助成措置を受けて
建造ないし運航される船舶以外は,外国への登録も認めている国や,外国の船主の所有する
船舶の自国への登録を受け入れている国が少なくない。したがって,多くの船主は比較的自
由に登録国を選択できる立場にある。こうした一般的船舶登録環境のなかにあって,例外的
事例として,外国の船主による登録を受け入れるばかりでなく,登録手続がきわめて簡単で,
しかも所得税や法人税をほとんど課さず,さらに乗組員の配乗に制限を加えないで船主の自
由にまかせる, リベリア,パナマ,ホンジュラスなどの国があり,ギリシア船主,アメリカ船主を
はじめとする多くの先進海運国船主がこれらの国を便宜的に置籍国として利用している。この
ような便宜置籍船はすでに世界商船隊のなかで大きな比重を占めているが,高い海難事故
率,劣悪な海上労働条件,発展途上国海運の発達に及ぼす影響等の弊害をもたらす要因に
なっているとして,国際的な場で問題視されている。

回答
 同じく、インターネット・オンライン事典のひとつである小学館の『日本大百科全書2001年版』
が載ったジャパン・ナレッジ(www.jkn21.com)を検索すれば、次の結果をえるはずです。また、
便宜置籍船の問題点について整理した著書、論文は、さしあって、このホームページの「論文
選集」に、次の論文が収録してありますので、参照して下さい。〈篠原陽一〉

便宜置籍船とその分析について 交通学研究1978年年報 1978年11月
便宜置籍船と新国際海運秩序秩序の相克 『経済』283 1987年11月
現代海運の展望と課題『現代海運論』(雨宮洋司共編著)第5章 税務経理協会 1991年4月

【便宜置籍船 flag-of-convenience vessel〈篠原陽一〉】
 略称FOC。船主が船籍を便宜的に外国に置いた船舶をいう。パナマやリベリアをはじめ、キ
プロス、バハマ、マルタ、バミューダ、バヌアツなど数か国に、外国船主が船籍を登録すること
で、創・廃業、租税制、資金調達・移送、船員雇用、安全規制などに関して、さまざまな便宜を
享受している不公正な保有・運航形態の船舶である。
 外国置籍は古くからみられたが、便宜置籍船の起源は、第二次世界大戦後、アメリカが余
剰になった戦時建造船の海外売却にあたって、有事の際、自らの統制下に入れるため便宜置
籍国への移籍を条件とし、また民間船のそれへの移籍をも奨励したことにある。当初、その実
質所有者は、アメリカの石油メジャーやギリシアの海運王オナシス(1906―75)などであった
が、1970年代に入って、それを不公正な競争者と批判してきた先進国も利用するようになり、
急激に増加した。
 1997年(平成9)の便宜置籍船は9000隻、3億2880万重量トンで、世界船腹の42%を占め、そ
のうちパナマに42%、リベリアに29%が置籍され、実質所有者の国籍はギリシア23%、日本
18%、アメリカ7%、香港(ホンコン)7%、ノルウェー7%などとなっている。日本は、日本籍船を
882隻、2030万重量トン、外国籍船(主としてパナマ船)を1925隻、6896万重量トン保有してい
るとされている。
 第二次世界大戦後、アメリカは世界の原燃料資源を支配したが、先進国の国内資源と競争
しながらそれを大量に売り込むためには、輸出価格に高い比率を占める海上運賃を引き下げ
る必要があった。その際、自国船よりも費用のかからない船腹の保有・運航・建造方式が求め
られ、便宜置籍船が発生した。それを通じてアメリカ海運は多国籍企業として成長していった。
戦後、日本はアメリカの原燃料資源の最大の輸入国となったため、荷主や海運企業は便宜置
籍船を大量に用船するようになった。さらに、日本輸出入銀行(現、国際協力銀行)は便宜置
籍船に有利な延払い融資を与え、造船企業はそれを大量に建造し、その発達を促進した。便
宜置籍船の産みの親はアメリカであったが、日本は育ての親となった。
 便宜置籍船は、実質所有国では船員雇用の縮小、労働条件の悪化、財政圧迫、国民福祉
の低下、中小企業の経営困難、国際的には海難・海洋汚染の拡大、不安定雇用船員の増
大、開発途上国海運の圧迫など、多くの悪影響がみられる。それに対して、国際運輸労連(IT
F)はボイコット闘争を展開しており、国際労働機関(ILO)は「商船の最低基準に関する条
約」、国際海事機関(IMO)は「船員の訓練、資格証明および当直維持の基準に関する国際条
約」(STCW条約)を採択し、国際規制に取り組んでいる。
 国連貿易開発会議(UNCTAD、アンクタッド)では、開発途上国海運の発達のため、便宜置
籍船の廃絶に向けて討議が行われてきたが成果があがっていない。
【本】国連報告書、竹本正幸訳『便宜置籍船と多国籍企業』(1979・ミネルヴァ書房) ▽篠原陽
一編著『現代の海運』(1985・税務経理協会) ▽水上千之著『船舶の国籍と便宜置籍』(1994・
有信堂) ▽武城正長編著『国際交通論』(1998・税務経理協会) (C)小学館


ホームページへ

目次に戻る

inserted by FC2 system